JR/EH-2 彼を好ましく思う理由は、少なくない。 強靭な精神や肉体を例える時に、人はよく刃物に擬える。よく研ぎ澄まされた剣だとか、真っ直ぐ射抜く飛矢だとか。 ジャックは鏡のようだと思う、まだ、制服を着ていた時から。本人は、ストイックなユニフォームの有無でまるで別人になったみたいな気でいるけれど。 彼は、誰かと向き合う時に、期待を抱かない、ほんの少しも。ただ目の前にあるものを見るだけ。だから、彼と話す時、大体の人間は彼を見ながら、自分自身の姿を見つめることになる。 安っぽい暖色の照明の下でも、向かいに座る彼を見つめれば、いつも僕が彼に抱く期待が少しも歪まずに反射される。同じ寂しさを持っていてほしい、でも、気づかないふりをして、一番痛い場所は触らずにいて。一度、認めてしまったら、どうなるか自分でもわからないから。ただ、一時、僕に何も期待しない君の横で眠りたい。 「二杯目のコーヒーは?」 「もう少し強いものがいい」 下げた瞼に応えるように、頬にあたる熱さと、擦り合わさった同じ珈琲の香。ぐちゃぐちゃに結ばれて瘤だらけのロープが、ゆっくり解けていくような心地がする。