さやが大学を中退して2年ほどたったある日、私は彼女の部屋を訪れた。 雑然とした部屋に、歯磨き粉かなにかであろうか、七生報国の文字がでかでかと書かれている。 叩きつけるような筆致で画かれたそれはオーバードーズを起こした時のものなのか、壁面の石膏ボードを削り、ところどころ血がこびりついていた。 「いい?皇恩に報いるためには、われわれ国民が一丸となって遮二無二進まなければいけないの」 薬のせいか頬はこけ眼窩はくぼみ、しかし目は異様に爛々として、私にこう語りかける。 「これが私にそれを気づかせてくれたの」 震える手で差し出してくれたもの、PCゲームと思しき箱にはこう書かれていた、 マブラヴ オルタネイティヴ、と。 がらんどうになってしまったさやのなかは、安くて質の悪いエチルアルコールでいっぱい、しげるが日頃飲んでいるといっていたお酒のような。 それに抱かれながら、身も心も心底幸せそうなさや。 カタンと、彼女の手から、その箱は零れ落ちた。