皇牙サキが『返校』の実況動画を配信してる。サキは金髪で派手めのギャルだ。『ギャハハ。走れオタク!』と笑いながらウェイ君を操作してる。たしかに台湾映画の少年や若い男はオタクみたいなことが多い。 動画を見ながら、僕は中学生のころを思い出していた。 僕の生まれ育った町は映画館もゲームセンターもない田舎だった。クラスメイトたちは垢抜けなくて、女子も化粧なんかしてなかった。その中でギャルのしげるはずっと大人びて見えた。しげるは暴走族で自動車整備工の彼氏がいるという噂だった。 当時、僕は週刊の漫画雑誌と夕方に放映するアニメだけが楽しみだった。 そんな僕に、しげるは突然話しかけてきた。 「オタク、この映画知ってるか」 「え。う、うん」 「じゃあ一緒に観にいくぞ」 僕たちは電車を乗り継いで、『幻の湖』を上映してる映画館までいった。映画より、女の子と一緒に出かけるという初めての経験に僕はドキドキしていた。しげるは当然のようにチケット代を僕に支払わせた。 家で一人になると、しげるが自動車整備工の彼氏にプラモデルのグフやザクを作ってあげているところが頭に浮かんで、悔しくて切なくなった。それが僕の初恋だった。