初夏の涼風が木造校舎に吹き渡る。風圧が文芸部のカーテンをふわりと膨らませた。室内にはわたしと小百合しかいない。幼稚舎から大学まである女子校で、かれこれ十三年になる付きあいの小百合が、わたしを呼びだしたのだ。 用件は察しがついている。わたしたちが耽溺してきたテレビシリーズの劇場版最新作の公開を今月に控え、小百合はここのところ目立って気分が乱高下していた。 「何の話をしたいかわかったみたいね。さすが萌南(もなみ)」 小百合がウキウキと言う。小百合の頭はいいけれど人の話を聞かないところが、わたしは昔から嫌いだった。 「そう。今月の劇場版最新作のことよ。そのたかだか一時間ほどのフィルムでわたしたちの諸々の『解釈』が崩壊してしまうかもしれない。その危険への対処のためよ」 わたしたちはしばらく前から、そのテレビシリーズの二次創作にとり組んでいた。それも、劇場版で新登場したキャラクターの。映像の間尺が短いだけに、キャラクター性やキャラクター間の関係性の解釈の余地が大きく、今月、公開される新作で、そのすべてが無に帰す恐れがあった。 「わたしたちの『解釈』がまちがってたら、またやり直せば……【続く】