「それでな、セーラがバス追い抜いたところで炎のランナーのBGMが流れんねん」 電話口から楽しげに話す洋榎の声が聞こえる。 その話をさえぎってセーラが言う。 「いきなり電話かけてきたと思ったら何の話やねん……」 「え、今日見た夢の話。セーラ、バスより速いんやな」 「夢の話やろ。俺がそんなことできるわけないやん」 当たり前のように答える洋榎にセーラはため息をつきつつも言った。 「そんなことより、貸したままの30円…… 「あぁ、テレホンカードが切れる」 プッ セーラの言葉が終わらないうちに洋榎との通話が切れた。 いや、洋榎が通話を切ったといったほうが正しいか。 「テレホンカードってなんや、そっちも携帯やろ」 セーラが自分の携帯を見つめながらつぶやく。 麻雀部に向かっている途中で洋榎からの突然の電話にいぶかしく思いつつも 電話に出た結果がこれである。 散々、夢の話をされた挙句、セーラが貸した30円の話を切り出したら 電話を切られてしまったことにもう一度ため息が出る。 「だいたい、夢オチって最悪やろ」 そう言って、セーラはさらにもう一度ため息をついた。 つづく。