NM/EH-4 「それほど悪いものじゃないさ。人の子は肉体が滅んだあと、太陽が沈むように海に落ちて砂漠を旅する。大いなる悪との戦いを経て、夜明けのように再生する。もう君は100回くらいやってるから、器が眠った後まで走る必要はないだろ」 まずは君が、残したものを見て回ろうじゃないか。堕落や退屈も少し学んだほうがいい。イーサンハントには酷い拷問かもしれないが。 瞼を伏せて語りかけられる、日常を少しだけ想像してみる。 「隠居後みたいな生活だ」 「体が滅んでも現役を貫く気か?やっぱり被虐趣味があるな、そういうことなら別な方法で発散させてやろう」 とんとん、と、肩を叩いていたてのひらが、湿度を変えて胸元に落ちてくるのを勢いよく叩き落として、押さえつける。一瞬前まで微睡んでいようとも、すぐに全てを切り替えて戦闘体制に入れられる。仕事の恩恵であり病気だ。 「ところで、二者間契約で一方だけが契約書面を持っているのはおかしいと思わないか?」 「イーサン?」 結婚とはいえ契約は契約なのだから、交渉事に合わせた形で口角を上げて一番の笑顔を作る。