「ぐえッ」 背中に少女が飛び乗り、俺はカエルの潰れたような声をあげた。 「こらッ、しげる。ゴロゴロするんじゃない、この生ハムの原木の生木が。こんなかわいい女子中学生が家事をしてあげてるんだから、しっかり仕事しなさい。……あ、生ハムの原木の生木って言うのは、ブタって意味ね」 「家事って、毎食つくってるのは俺だろ。さっきも麻婆豆腐を旨そうに食ってたじゃないか」 こいつはイチコ。親友の忘れ形見で、中学二年生だ。なんの因果か俺が育てることになり、今に至る。 「いつも食器洗いしてるのはわたしでしょ。男の料理って、ホント、やったらやりっぱなしなんだから」 そう言い、イチコは体を上下に揺らして体重をかけた。 「グエエ。まずは降りてくれ」 「まったく、だらしない体つきをしちゃって。せめて、隔日で腕立て伏せでもしてれば、今ごろいい体になってたのに。いい? 腕立てって言うのは、自重を負荷にしたトレーニングなんだから、太ってる人間がすればそれだけ大きな効果があるんだよ。しげるの体重なら、一日十回を朝晩二度、隔日でやるだけで高負荷のベンチプレスと同じ効果が得られるんだから」 「これならジムに行った方がマシだ」