やこさん列車を待つホームは、時間帯のせいもあってか閑散としていて、僕は幼馴染とベンチに腰を下ろした。 春からやこさん職人の修行のため、都会に出る彼女が話すのを僕はただただ聞いていた。 やこさんで彩られた都会のまばゆさ、修行先の印象、最新のやこさん技術の進歩、一人前になったら村にやこさんを増やしたいという夢── 何十回も聞いた話を、「もういいよ」と遮ることが出来なかったのは、それを語る彼女の声と表情があまりに煌びやかだったから。 (きっと彼女が見た都会のやこさんも、こんななんだろうな) そう思ったとき、彼女の夢のはしっこに触れたような、くすぐったい感触があって、僕は少し笑みをこぼした。 やがてやこさん列車が着くと、彼女はボストンバッグを重たげに抱えて、ホームから車両へ脚を踏み入れる。 「都会に来ることがあるなら連絡してね」 ドアが閉まる彼女の言葉が、本心からか、社交辞令なのか、顔を伏せていた僕には分からなかった。 ホームを去る列車のライトを眺めて、僕はその遠ざかるやこさんの光を、生まれて初めて少し恨めしく思った。