JL/EH 「この仕事は昏い、痛みや、憤り、それから底のない恐怖を枕に体を休めるんだ」 どことなく、硝子の向こうを見つめる横顔から、冷たさが滑り出してくる。窓の外は国道で、行き交う車のライトが窓を叩きつける雨に鈍く反射する。 知り合って7年、共有した時間はおよそロシアの短い夏くらいのものだが、イーサンハントは弱音を吐くことはなかった。 「あの子には、まだ早かったのかもしれない」 弱音の吐き方というものを随分昔に忘れてしまったように見える。 「そいつだけじゃない。冷水に浸していくのに十分な備えなんてものは、誰にもない」 お前にも、俺にも。 最後まで口に出したら、もう姿を見ることはなくなるだろうか。自分が制服を畳んだあとも続いたこの不思議な縁は、あっさり焼け落ちるだろうか。これほど湿度を含んでいても。 「二杯目のコーヒーは?」 「もう少し強いものがいい」 ゆっくり、室内に戻ってきた瞳は、いつものヘーゼルより少し赤い蜂蜜色に見える。ゆっくり溶け出すように甘えた後に、そっと瞼の向こうに消えていく。ただ、一瞬だけ羽を休める。 できることはただ、唇を落とすだけ。