暑い居酒屋だった。暖房の効きすぎか、人の熱気か。人の話し声で埋め尽くされた店内、座敷席、隣で躑躅森盧笙が酔い潰れていた。白膠木と解散し、奴がイケブクロに行って以来、抜け殻になってしまったような男を誘い、飲み会を開いたのは同期の内の一体誰だったか。一般人、素人へとドロップアウトする同業者への餞別か、慰めか。知ったような口をきき、当たり障りない言葉をかけながら、酒を腹に注いでいく。躑躅森は自分の心内を晒すことはなく、ただ酒を呷っていた。愚痴を肴にした酒も尽き、周りが二次会へと移動し始める中、俺だけが運悪く介抱と送迎を押し付けられた。酔い潰れた躑躅森の隣で焼酎を飲んでいる。そろそろ帰ろうかと立ち上がろうとしたとき、テーブルに突っ伏していた躑躅森が俺の腕を掴んだ。「ささらぁ……」首まで赤くして、瞳を潤ませ、ここには居ない男の名前を呼ぶ。無造作に撫で付けた前髪、開いた胸元、汗でほのかに湿った肌が目に入る。この男は一体俺にどうされたいのだろうと思った。