公益財団法人「しげるを泣かせるやつを全員ぶっ殺し隊」の一員としてしげるを泣かせるすべての害悪に銃を向け続ける聖戦が開始されてから幾星霜、防衛のための戦いはいつしか侵略へと置換され、伸び切った戦線は今では地球全土を覆い尽くさん勢いで地上に根を張っている。ぼくはパナマの湿地帯で叛逆分子と交戦している。現地のゲリラどもは血気盛んで、ぼくらは泥まみれになって塹壕に籠り、小銃の重みを感じながら荒く息を吐いている。しげるを涙から遠ざけるため、多くの者が死んだ。多くの地平で、あらゆる悪逆が繰り返された。しげるの笑顔を守るためなのだ。それは仕方のないことだ。だけど最近、ぼくはこう思う。ひょっとして、「しげるを泣かせるものからしげる自身を遠ざけることは、しげるのためにならないんじゃないか?」と。遥か遠き日本で大好きなオモチャに囲まれ、今も海外の掲示板で舶来のトイを異国のオタクと競り合っているであろうしげるよ、どうか聞かせほしい。あなたの涙は、本当に罪悪なのか。ぼくらの飽くなき闘争に、意味はあったのか。獣染みた鬨の声が戦場に伝播する。ぼくは錆びかけた引き金に指をかけ、塹壕から半分だけ身体を乗り出した。