【承前】いいだけでしょ。わたしたちの『解釈』だって、公式の発表にもとづいてるものなんだから、全否定されることはないはずだし」 小百合は指をふった。 「ノンノン。もうわたしたちはそういう次元を通りすぎている。もはやわたしたちの『解釈』は実体と言える重みを獲得している。あなたもそれを認めるでしょ、萌南」 「でも、公式の発表は絶対だよ。作品を鑑賞者が解釈する。それが二次創作でしょ」 小百合が目を細める。その眼差しは怖いほどに鋭利だった。 「そう。わたしもそれが真実だと思ってた。……けどちがった。この半年、わたしは間テクスト記号論を研究した。これによれば、作品の実体は作者、作品、鑑賞者の三項の総体で決まる。作者の自作への言及が作品の解釈に影響を与えるのがいい例。鑑賞者がそれらを無視して、自分の作品の解釈を貫くのはおかしい。けど、作者が作品の客観性をこえて自作の解説を押しつけることもできない。すべては総体で決まる」 「うん……でも、それってつまり、今のままの現実と変わらないってことだよね」 わたしが恐るおそる返事をすると、小百合はわずかに微笑んだ。 「ちがうよ。まったくちがう。【続く】