RM/JR 「はじめてだな」 「なにごとにも、はじめてはあるだろう?」 ウィンクをしながらマグを手渡して、それから、何が初めてなのかを目線で問う。わかって言っていたんじゃないのかと、呆れた呼吸がかえってくる。 「同じ相手と2度、軍属を辞めてからはなかった」 「それは光栄だな」 「物好きだと言っている」 本気でそう思っているんだろう。 自分の価値を理解していない、というのがまた、変なところが初心でアンバランスだ、たまらない。まだ、口をつけていないマグを取り上げて、不思議そうに見上げてくる目元をなぞる。すこし、疲れたように乾いている。 「You are the one luxury all the men cannot afford」 たった、いっときでも、自由を腕の中に抱くなんて、夢見ない男がいるはずがない。高揚感で、それこそ初めて恋を覚えた子供みたいに指先が痺れる。 目元から、唇まで指を滑らせても一切抵抗する様子なく、そっと瞼が下される。じんわりと、胸が温かくなるような心地がする。 「はじめてだな」 「なにが」 「おしえない」 いつか、ホテルデュキャップで答え合わせを。