海外ロケ、全国ツアー、地方局で打ち合わせ。一か月ぶりの我が家で俺を出迎えたのは離婚届だった。 「私と仕事、どっちが大事なの?」元妻はそんなありきたりな質問さえぶつけてこなかった。聞かなくてもわかってるということだろう。 噂はすぐに広まった。あのお喋り事務員め。 たくさんの子が励ましてくれた。 「プロデューサー、あまり落ち込まないで下さい」「気にすんな、俺はいつも通りだ。ってのも変か、とにかく大丈夫だ。ありがとう」 理由を聞きたがるのもいた。 「浮気ばれちゃった?それともNTR?」「どこでそんな言葉覚えた。外で使うなよ、清純派で売っていきたいんだから」 からかってくるやつもいた。 「寂しいなら私が付き合ってあげよーか?籍抜いたんでしょ?」「からかうなよ。人が大変な時にフライデーされたら許さんぞ」 あいつだけは何も触れてこなかった。仕事に真面目なあいつのことだ。プライベートは関係ない。俺は俺の役目を果たせばいい。それが今は一番の薬になる。あいつなりのエールに思えた。 一人には広すぎるマンションで、職場に近いからと俺がゴリ押しした賃貸で、発泡酒のプルタブの音が響いた。