前編 「おじいちゃん、しっかりして。」 山の中腹、霧が立ち込める山道で一人の少女が老人に声をかける。 「ごめんね、しげちゃん。足を挫いて動けないんだ。しげちゃんは私に構わず、先に下りてなさい」少女の顔は不安そうだ。「一緒じゃなきゃ嫌!」そう言って老人にしがみつく少女。 老人は困った様に答える。「大丈夫、おじいちゃんはあとで必ず会えるから」 「でも夜には雪が降るって言ってたし、おじいちゃんが凍えちゃう。もう夕方なのよ!」少女の顔は今にも泣きそうだ。 「そんなことにはならないよ。頼むから。」 諭す様に老人は言う。彼は自分が助からないであろう諦めの表情だ。 「嫌っ!おじいちゃんといる!」少女の涙が頬を伝う。一刻を争う絶望的な状況にもかかわらず、老人は孫の優しさに感動していた。 「…本当のことを言うと、私は助からないかもしれない。でもしげちゃんを巻き込みたくないんだ。分かって欲しい。」 少女はとうとう大泣きして老人の首に両手を回す。「嫌だよ!おじいちゃん!」 山に少女の泣き声がこだまする。 すると突然、霧の向こうから声がした。 「ヘリ、呼んでやろうか?」 ⭐︎つづくよ⭐︎