俺は相棒のしげる(クマのぬいぐるみ)を枕元において、ベッドに横たわった。俺としげるは毎晩、こうして一緒に映画を見るのが習慣だ。だが、今日はいつもとはちがい、朝からベッドにいる。 上司に、俺としげるの交換日記による映画の鑑賞記録を見せ、「これを円城塔と妻の田辺青蛙の『読書で離婚を考えた。』(読書感想文の交換日記)みたいな本として出版するのが夢なんです」と語ったら、「病院行け」と言われた。きっと、コロナウイルスの罹患を心配してくれたのだろう。それで、病休をとったというわけだ。 「今日、見るのは『ワールド・ウォーZ』だ。イスラエルの壁にゾンビが殺到する、アンチ黙示録みたいな情景が最高だな。イスラエルの女性兵士も最高にキュートだ。…え?原作の名前を汚すクソ?どうしてそんなことを言うんだ!」 俺はしげるを壁に放りなげた。瞬間、我に返り、しげるを拾いあげる。 「ごめんな?でも、原作だって日本編は、人口密度の高い東京は防疫には最悪の都市だった、ってドキュメンタリー的な文章のあと、謎のサムライ誕生エピソードがはじまるだろ?…わかった。今日は一緒に、モデルガンと保存食でプレッパーごっこをしような?」