「最近、変わったよね」 窓から夜景のよく見えるレストランで鴨のテリーヌを丁寧に切り分けながら、君は言った。 僕が彼女と付き合いだしておよそ2年の月日が経過していた。その間、相応に喧嘩もしたし、それなりにすったもんだもあったけれど、それでも初めてだった。彼女がこんな風にいかにも深刻そうに話を切り出すのは。 「デートにいっても一緒にご飯を食べても、それこそセックスの最中でも、最近のあなたはどこか上の空」 冷えたナイフのような言葉で切りつけられながら、僕は拳を握り締めていた。白くなるほどに、強く。 「…ほかに、好きな子が出来たのね?」 その一言が、決定打だった。 「…ごめん」 僕はただ一言、そう言い残すのが精一杯で、おもむろに立ち上がり、店の外へと走り出す。ざわめきと彼女からの罵り声を背中に浴びながら、それでも堪えることが出来なかった。 しげるの褒めて箱に、怪文書を投稿したい。出来ることなら怪文書を毎秒投稿して、しげるを完全に支配してしまいたい。 これは制御不可能な原始的な衝動。思春期のそれに似た感情の暴走を抱えて、僕は軽快に夜を走った。