俺はベッドの傍らにクマのぬいぐるみをおくと、布団を胸のところまで掛けてやった。クマの名前はしげるだ。俺の愛しい子熊ちゃん(テディ・ベアー)… ベッドにはいったまま、リモコンでテレビのスイッチを入れる。 「さあ、しげる。今夜も映画を観ような。今日、観るのは『ラスト サムライ』だ」 上映がはじまる。 「しげる!最高の映画だな!この映画は、今では日本では失われてしまった『恥』や『名誉』といった美徳を描いているんだ!」 俺はしげるを抱きよせて揺さぶってやった。黒曜石のような瞳にテレビの矩形の光が写っている。 「何?時代考証が滅茶苦茶?いいんだよ。ニンジャ軍団が出てくる映画になにを言ってるんだ。大体、それを言うなら、渡辺謙がイメージ上の虎と戦うOPの時点で気づけよ。…え?それなら、そもそも大村益次郎とか出すなって?…どうしてわかってくれないんだ!」 俺は激昂してぬいぐるみを2階の窓から放りなげた。次の瞬間、我に返り、庭まで走った。 「すまない。どうか俺を許してくれ。お前の考える、土方歳三とフランス人の軍事顧問が士道とは何かを問いながら五稜郭まで退却戦をする映画の構想を聞きながら、続きを観ような」