(続きです)剥き出しのまま眠りについたファウストは、薔薇の塔で錘に刺された眠り姫のような、人形のように美しい寝顔で、理想の『夢』、つまり明日や明後日、いつ来るかも分からない未来を見る夢から、残酷な現実、現実から逃れるために現実逃避のために、脳と心を休ませるために見る夢へと変貌する悪夢に悩まされているのだと思うと、鍵を開けてファウストを連れ出すためでなく、今度は鍵を閉める門番として立つレノックスの覚悟の重さがより伝わってきます。閉じ込められている側と、連れ出そうとする側。殻にとじこもることすら許されないその人と、二度と鍵が開かないように守る彼。その決定的な距離感が、遠い過去と今、いつか来る未来と重なっていて、翠さんの表現の素晴らしさに感動しました。(続きます)