「子守唄は好かん」 野営の夜、他の仲間はとうに焚火の周りで夢路についている中、見張りの無聊の慰みに奏でていた唄に、焚火の向こうからむすっとした声が応える。 「おや、寝付けなかったのかい。キミからのリクエストなんて珍しいね。何かご希望はあるかな?」 相手の物言いに腹を立てるでもなく、どこかおどけた声でバルバトスが返す。 「知らん。貴様の好きにしろ」 ただ、と呟くようにガープが続ける。 「子守唄は苦手だ」 そう告げる言葉の理由はわからない。バルバトスも問いはしない。ただそう呟く声は、常のこの戦士には珍しく、どこか幼く寄る辺なく、吟遊詩人の耳に響く。 「了解。なら、何か静かなやつを一曲」 微笑と共に返すと、バルバトスは穏やかで通俗的な、古い恋歌を口ずさみ始める。興味を失ったのか、焚火の向こう、逞しい肩がうつらうつらと船を漕ぎ始める。 やがてそれが静かな寝息に変わるのを見守りながら、歌声はひそやかに木々の間を流れて行った。