NM/EH-3 結婚などと言っておきながら、気まぐれに現れて遊んでいっては、それきり数年現れないことも珍しくない。契約条件のはずの、仕事もぎりぎりに現れて、くだらない言い訳ばかり。バカラで勝っていたから途中で抜けられなかっただとか、君へのプレゼントは花とチョコレートどちらがいいかで悩んでいただとか。 「日々離婚を考えさせられる」 「毎日夫のことをかんがえる、と」 この太腿に刻まれているヒエログリフの副作用なのか、カサついた手に額を撫で、髪をすかれると心と目元が緩んでしまう。 「この太もものマーク、傷をつけたり皮膚ごと削いだら契約に影響はあるのか?」 「物理的にいうと大腿骨まで、魔術的にいうと魂に刻まれてる。僕ならやめておくけど、イーサンは痛いの気持ちいいんだっけ?」 「これ程意思疎通が取れないと、やっぱり結婚生活が思いやられるな。今すぐ滅んでくれ」 同じ場所を、繰り替えし甘やかす手の当たる場所が変わるように、自分で首を調節する。小さな子供のようだと笑う気配がするけれど、首を動かしてしまったせいで顔は見えない。