「頑張ったから褒めてほしいのかしら?」 紫が顔を近づけて囁いてくる。彼女の白い手が持つ橋の先には、天子が作った料理。 「そ、そんなんじゃないし……」 「あら、どうして顔を背けるの?」 紫は困惑する天子の顎に細い指を沿わせ、自らの方へ向けさせた。 至近距離から見つめ合い、紫の瞳に宿る輝きの深さに天子が息を呑む。料理の匂いに混じって紫の香りが漂ってきてクラリとした。 「私のことを考えて作ってくれたのね?」 「ま、まぁ、あんたには幾つか恩はあるし、一応っていうか……」 普段と違い、ハッキリと喋れない天子が、紫の微笑みを直視できず目をそらした。 その一挙一動、息遣いまでもが愛らしいと紫は思い、天子の顎に当てていた手をそっと頭へと移した。 「あっ……」 「よく頑張ったわね、えらいえらい」 「やっ、そんな言い方ずるい……」 子供扱いなんて嫌なはずなのに、不思議な柔らかい言葉に抵抗の意をそがれて、天子は顔を赤らめ肩を狭める。 身を小さくする天子に、紫は己の内で情愛の火がちろちろと燃え上がるのを感じていた。興奮に首筋を一滴の汗が辿る。 最初は冗談だったのに本気になってしまうではな文字数