「3000万!」「3500!」「5000万!」 怒声がオークション会場に響き渡る。壇上で競売にかけられているのはしげる──神から最も愛された男のひとりだ。 彼に値をつけているのは枯れ木のように老いさらばえ、あるいは脂ぎったミリオタの老人どもで、馬鹿らしい。しげるは、彼の才覚は老い先短い老人たちのために戦車や戦闘機の模型を作るためにあるのではない。しげるの才能は、もっと市井に対して開かれるべきなのだ。そう思い、私が札を持ち上げようとした、その時だった。 「──50億」 会場は静まり返り、無論、即決だった。 落札者は悠々と自信に満ちた足取りで壇上へ歩み寄り、敗北者たちに誇示するようにしげるを連れ帰ろうとする。 私は絶句する。いったい誰が金にあかせてしげるを落札したのか。歯噛みしながら憎いその人物の顔を盗み見ると──それは紛れもなく、タカラトミーの社長だった。 ああ、これからしげるはダイアクロンやシンカリオンなどの大好きなオモチャに囲まれて、幸せに暮らすのだ。 おめでとう、しげる。いつまでも、幸せに。 私は濡れた頬を誰にも気取られぬよう、足早に会場を去った。