「デヴィッド・グレーバー『官僚制のユートピア』。《バットマンと構成的権力の問題について》は名論ね。『ダークナイト』に対して『ダークナイト ライジング』がどうしてクソになったのかということを、理論的に述べたものよ。《ヒーローはつねに反動的だ。スーパーマンもバットマンも想像力は欠けている。彼らの巨大な力を使えば、いくらでも世の中を良くできるのに。それに比べて、ヴィランたちの頭は陰謀やアイディアでいっぱいだ。つまり、彼らは楽しそうなのだ。彼らが統治を任されたら、即座に新しい法律の十や二十は思いつくだろう。それが彼らに都合のいいものだとしても》。グレーバーはウォール街占拠運動の主導者よ。いわばヴィランである彼は、アメコミの熱心なファンでもあるの」 フーターズのTシャツを着た髭面の男…しげるはくぐもった笑いをした。 「エスちゃん。今のは恋愛コラム三箇条、《自分の話をしない》《一人で長く話さない》《難しい話をしない》に反してるよ。そんなオタクみたいな喋りをしてたら、女子力が下がって非モテになっちゃうよ。恋愛コラムニストとしてのアドバイスだよ。アメコミの話題も禁止」 「しげる…」 エスは涙を零した。